遺伝子治療の方法

>>がん遺伝子治療とは     >>遺伝子とは何か     >>世界で初めて承認された遺伝子治療用製剤

  • 遺伝子治療では、遺伝子そのものを直接操作して治療を行います
  • 重要なことは、異常をおこしている遺伝子そのものは無害なのですが、その異常な遺伝子によって作られるタンパク質(がんを含む)が有害ということです。
  • そのために、遺伝子の直接操作だけでなく、遺伝子の解析により遺伝子の働きを知り、それに応じた間接的な手法も可能になります
  • 治療用遺伝子を治療する細胞に送り込むには、後述のベクターというしかけを使います
  • 遺伝子治療のための遺伝子解析の副産物として、異常遺伝子を特定した上で、遺伝子異常による二次的なタンパク質の異常などを特異的に治療する方法があります。

▼遺伝子そのものを直接操作する手法

●正常な遺伝子を新たに加える(当院ではこの方法を採用しています)

  • 異常遺伝子はそのままにして、正常な遺伝子を新たに細胞に加えて働かせます
  • 一番早い時期に実現され、現在実用化されています。
  • 北海道大学で行われた、免疫に関係する酵素(化学反応を助けるタンパク質)を作る遺伝子がなくなる先天性の病気・「ADA(アデノシンデアミナーゼ)欠損症」の遺伝子治療もこの手法です

●異常遺伝子の働きを止める

  • 「アンチセンスDNA」と呼ばれる、特定の遺伝子配列に結合する人工的な遺伝子配列を異常遺伝子に結合させて、異常遺伝子の転写を阻止して異常遺伝子が働けないようにしてしまいます
  • DNAの塩基対が必ず特定のペアになる性質を逆手にとって、異常遺伝子にフタをするのです
  • 異常遺伝子が働けなければ、細胞に害を与えるタンパク質は合成されないので、病根を断つことができます

●遺伝子の異常な部分を切り取る

  • 「制限酵素」と呼ばれるDNAの特定の部分を切り取る酵素で、異常遺伝子を切り取ります。いわば遺伝子の手術です
  • ただし現在は、制限酵素は望みの所を自在に切り取れるわけではなく、切り取れる位置には制限があります。

▼治療用遺伝子の運び屋「ベクター」

  • 遺伝子治療を行うために、治療用遺伝子を治療する細胞に入れる仕掛けを「ベクター」と呼びます
  • 遺伝子を細胞に入れて働かせることを、遺伝子導入と呼びます
  • 遺伝子を細胞に導入し治療するには、ベクターは不可欠です。ベクターは、遺伝子治療の要なのです
  • 基本的なベクターは、病原性をなくしたウイルスなどを使います。ウイルスが細胞に感染して自分の遺伝子を細胞に送り込む働きを利用します
    • ウイルスによるベクターでは、ウイルスの中に治療用遺伝子を入れます。ウイルスは治療する細胞に感染すると遺伝子を放出(ウイルス本来の働き)するので、治療用遺伝子が放出されるのです
    • ウイルス本来の病原性が現われないように、ウイルスを加工します。方法としては、ウイルス遺伝子の本体を削除したり、ウイルス遺伝子本体を起動する遺伝子を削除します。したがって、ベクターではウイルスの遺伝子は働けません。また、レトロウイルスやアデノウイルスなど(風邪などのウイルス)病原性が弱いウイルスを使います
    • ウイルスによるベクターはごくまれに、副作用として本来の病原性を表わしたり、勝手に増殖するウイルスが混じることがあります
    • 万一、上記の様な副作用が現われた場合にすぐ治療できるように、ベクターのウイルスの遺伝子に、抗生物質の作用を強く受ける=抗生物質ですぐ殺せる 遺伝子を加えることが行われています